メンタルヘルス入門
2025.09.04
PMSは婦人科と心療内科どっちを受診する?迷った時には症状で考えよう
生理前になるとイライラや気分の落ち込み、体の不調が現れ「PMSかもしれない」と感じる女性は少なくありません。PMSの改善には医療機関の受診がおすすめですが、婦人科と心療内科のどちらに行くべきか迷う人も多いのではないでしょうか。
PMSの場合、症状の現れ方によって受診すべき診療科は異なります。自分のPMS症状に適した診療科を選ぶためには、PMSの基本や治療法を知っておくと役立ちます。
この記事では、PMSに悩む女性が自分に合った医療機関を選ぶためのポイントや、婦人科・心療内科それぞれの治療内容、受診の判断基準などについて紹介します。PMSの受診科について悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
婦人科で行われるPMS治療
PMSの診療では、まず婦人科(産婦人科)の受診を考える人も多いのではないでしょうか。
ここでは、どのようなPMS症状が婦人科に行くべきなのか、婦人科でどのような診療や治療を行っているのかなどについて紹介します。
婦人科が適したPMSの症状
ホルモンの変化が原因で身体的な症状が強い場合は、婦人科の受診が適しています。
例えば、以下のような症状は身体的な症状に該当します。
- 頭痛
- 腹痛
- むくみ
- 倦怠感
- 生理周期の乱れ
- 強い生理痛 など
このような身体の不調が目立つようであれば、ホルモンの変化が影響している可能性が高く、婦人科での治療がおすすめです。
診療の流れと検査の内容
婦人科では、まず医師による問診で月経周期や症状、生活への影響について詳しく聞き取ることから始まります。その上で、必要に応じて以下のような検査が行われます。
- 超音波検査
- 血液検査
- 尿検査 など
このような検査で子宮や卵巣の疾患、ホルモン異常、貧血、妊娠の有無などの確認が可能です。また、月経困難症や子宮内膜症、PMDD(月経前不快気分障害)など、ほかの病気と区別するためにも検査は欠かせません。
例えばPMDDは、婦人科よりも心療内科や精神科が適している場合もあり、本人の症状によっては診療科の変更や、両科が連携した治療が用いられることもあります。
ホルモン療法や漢方薬の役割
多くの婦人科のPMS治療では、ホルモン療法と漢方薬を活用しています。
例えば、ホルモンバランスの乱れを整えるために低用量ピルを処方することがあります。これは生理前の急激なホルモン変動を緩和することでPMSや生理痛を軽減させる治療です。
漢方薬は体質や症状に合わせて使い分けられ、例えばお腹の張りやむくみ、頭痛には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が処方されます。一方で、精神的なイライラや落ち込みには加味逍遙散(かみしょうようさん)や抑肝散(よくかんさん)などが選ばれます。
ほかにも、頭痛や腹痛には鎮痛剤、むくみには利尿剤など、症状に適した薬が処方され、1人ひとりに合わせた治療が進められます。
婦人科に相談する目安とポイント
PMSの症状が生理のたびに強く、つらいと感じるのであれば受診のタイミングです。迷った時には以下を参考にしてください。
- 生活や仕事に支障が出ている
- 市販薬やセルフケアで改善しない
- ほかの病気の可能性が心配
生理前に現れる症状や期間、生活への影響などをメモしておくと、診察時に状況を伝えやすいです。
また、婦人科で治療を始めても効果を感じるまでには時間がかかることもあるため、定期的な通院と根気強いケアを意識してください。
心療内科で行われるPMS治療
PMSの症状の中には、メンタルの不調が大きな割合を占めるケースがあります。精神的症状が強い場合、心療内科や精神科での治療が適していることも珍しくありません。
ここでは、心療内科が向いているPMSの症状や治療法などについて紹介します。
心療内科が適したPMSの症状
精神的な症状が主に現れる場合は、心療内科の受診をおすすめします。例えば、以下のような症状は精神的な影響が強いです。
- 生理前の強いイライラ
- 落ち込み
- 不安、怒り
- 家族や同僚に対して感情を抑えられない
- 理由もなく悲しくなる
このような症状で仕事や日常生活に支障が出ている場合、心療内科の受診を検討しましょう。
特に、感情のコントロールが困難で自己否定的な思考にとらわれたり、「いなくなりたい」とまで感じてしまう場合は、PMDDの可能性もあるため、早めの受診を強くおすすめします。
診療の流れと検査の内容
心療内科では、医師による生理前後の気分の変化や、仕事・家庭への影響、同様の症状の既往歴などの細かい聞き取りが行われます。
必要に応じて、以下のような心理検査が行われることもあります。
- PMSチェックリスト
- うつ病のスクリーニング質問票 など
このような問診や検査は、PMSによる一時的な気分変調か、うつ病や不安障害といったほかの精神疾患ではないかを確認するために重要です。
診断後は症状の重さに応じて、生活指導やカウンセリング、薬物療法など個別の治療方針が立てられます。
抗うつ薬やカウンセリングの活用
心療内科でのPMS治療は、薬物療法と心理療法の両面からアプローチすることが一般的です。
精神症状が強い場合には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や抗不安薬などが処方され、気分の落ち込みや不安、イライラを和らげます。特にSSRIはPMDDの治療薬として一定のエビデンスがあり、適切な服薬をすれば症状の改善が期待できます。
また、心理療法ではカウンセリングや認知行動療法などを用いて、ストレス対処法や感情のコントロールを学びます。
心療内科に相談する目安とポイント
精神的に追い詰められたような感覚や落ち込みなどを感じた場合には、心療内科や精神科を受診してください。以下のような場合も受診をおすすめします。
- 気分の落ち込み
- イライラが強い
- 家庭や職場で人間関係に悪影響が出ている
- 生理前後にうつ状態や自己否定感が強くなる
- 絶望的な気分になる
- 「消えたい」と思うことがある など
すでに婦人科で治療を受けていても、精神状態が改善しない場合には、心療内科の併用で改善が期待できるケースも少なくありません。
症状によっては両方の診療科を受診する選択肢も
PMSの症状は身体面・精神面が絡み合って現れることも多く、場合によっては両方の診療科を並行して受診するほうがよいケースもあります。
ここでは、婦人科と心療内科を併用する意味や、医師同士の連携、受診する順番などについて紹介します。
両方の視点で診断を受ける意義
PMSの治療で婦人科と心療内科を並行して受診することは、より高い効果が期待できる方法です。
身体的な症状に婦人科でのホルモン治療や漢方薬などを用い、精神的な症状には心療内科でのカウンセリングや薬物療法を組み合わせれば、それぞれの領域で相乗効果が期待できます。
例えば、婦人科でピルによる治療で体の不調は改善しても精神症状が残る場合、心療内科での併用治療によって全体の症状が和らぐケースもあります。
両科の医師による連携
婦人科と心療内科の両方で診療を受ける場合、医師同士の連携が重要です。
例えば婦人科で「精神面のケアも必要」と判断されれば心療内科を紹介することは珍しくなく、逆に心療内科から婦人科への紹介が行われることもあります。また、自分で「婦人科と心療内科の両方が必要だ」と感じたら、遠慮なく医師に申し出て協力してもらいましょう。
受診の順序や紹介状について
婦人科と心療内科のどちらを先に受診するべきか迷う方も多いかもしれませんが、結論としては、どちらから受診しても問題はありません。
迷った時にはもっともつらい症状が何なのかを考えてみるとよいでしょう。例えば、以下のような考え方がおすすめです。
- 身体の不調や生理に関連する場合は婦人科
- 気分の落ち込みやイライラなど精神的な不調が主な場合は心療内科
判断が難しい場合は、まず一方の医療機関を受診して、「どちらに行くべきか迷っている」と医師に相談してください。医師が必要な判断をして、適切な科を案内します。
他科を紹介された場合、紹介状についても確認しておきましょう。特に大きな病院では、紹介状がなければ追加料金がかかるケースもあるため、注意が必要です。
不調を感じるからこそ早めの受診を
婦人科と心療内科のどちらに行くにせよ、つらい症状を感じているなら早めに医療機関を受診しましょう。
特に「生活に影響するほどの不調」がある場合、放置すると悪化してPMDDへ移行する可能性も否定できません。しかし、早い段階で適切な治療を始めれば、症状が重くなる前に対処できる可能性が高まります。
「病院に行くほどではない」と我慢してしまう女性は少なくありません。実際、厚生労働省の調査では、PMSやPMDDに悩む女性の38.5%が受診していないという結果が出ています。
【参考】厚生労働省「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」
少しでも気になる症状があれば悩まずに医師に相談し、適切な治療を受けて、重症化を未然に防ぎ、PMSと上手に付き合っていきましょう。
婦人科か心療内科か迷った時の判断ポイント
PMSの症状に悩み、どうしても「婦人科と心療内科のどちらがいいのだろう」と決めかねている人もいるかもしれません。
ここでは、婦人科と心療内科のどちらにするべきか、判断の参考となるポイントを詳しく紹介します。
受診前に整理しておきたいこと
受診先を決める前に、自分の症状の内容と傾向を整理しましょう。
まず、主な症状が身体的なものか精神的なものかを振り返り、どちらがより深刻か考えます。次に、症状が生理前に決まって現れ、生理が始まると軽くなるといった周期性があるかを確認します。
症状が日常生活にどの程度影響しているかも改めて考えましょう。
迷ったら医療機関へ相談を
「どうしても自分で判断できない」という場合は、医療機関そのものに相談してみるのも正しい方法です。
産婦人科の中には電話相談や助産師外来を設けているところもあり、「PMSかもしれないが何科に行けばいいか?」と尋ねればアドバイスしてもらえる場合が多いです。また、オンラインで相談できるサービスや、地域の女性健康支援センター的な窓口が用意されていることもあります。
受診までは症状緩和に役立つ生活習慣を
PMSの症状は、日々のセルフケアである程度和らげられる場合もあります。
ここでは、医師に相談するまでの間や治療と並行して実践しやすい生活習慣の改善ポイントを紹介します。
無理なくできる適度な運動
適度な有酸素運動やストレッチは、自律神経のバランスを整え、ストレスを軽減する効果があり、PMSの症状軽減に役立ちます。
例えば、以下のような運動がおすすめです。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- ヨガ
- ストレッチ など
このような軽い運動は血行を促進し、リラックス効果をもたらすため、気分の落ち込みやイライラを和らげたい時に効果が期待できます。
食生活のコントロール
バランスの取れた食生活もPMS症状の緩和に重要な要素です。野菜や良質なたんぱく質、穀物などをバランスよく摂るよう心がけましょう。
特に、以下のような栄養素を意識してください。
- カルシウム
- マグネシウム
- ビタミンB群 など
このような栄養素は、精神の安定やホルモンバランスの調整に役立ちます。
一方、塩分やカフェイン、糖分、過度のアルコールは症状を悪化させる場合があるため、適度な摂取を心がけましょう。
禁煙や禁酒
喫煙や過度の飲酒の習慣があれば、PMS症状軽減のために見直しを検討しましょう。
タバコに含まれるニコチンは、ホルモンバランスにも影響を与え、月経周期を乱す原因になります。
一方、アルコールは一時的に気分を紛らわせてくれるように思えますが、飲み過ぎると血糖値の急変動を招き逆に情緒不安定の原因になります。
完全な禁煙・禁酒が難しくても、量を減らす、PMSの期間だけでもやめてみるなどの工夫がおすすめです。
PMSダイアリーの活用
PMSダイアリーで月経周期と症状の記録をつけることで、自分の不調のパターンを把握しやすくなり、医療機関での診察にも役立ちます。以下のようなことを記録しておきましょう。
- 生理開始日と終了日
- その前後で感じた心身の症状
- 日々の気分や体調
- 食事や睡眠の状況 など
例えば「生理3日前から頭痛とイライラ」「生理開始と同時に症状が消えた」「排卵日あたりに一度気分が落ち込む」など書き出してみると、周期と心身の関係理解につながります。
まとめ
PMSは女性にとって身近な不調ですが、その症状は人によっては深刻になり、日常生活や人間関係に影響を及ぼすこともあります。
治療のためには婦人科や心療内科がおすすめですが、どちらを受診するべきか悩んだ時には、症状を考えて選びましょう。迷う場合は一方を受診し、必要に応じてもう一方を紹介してもらう方法もあります。
メンタルクリニック下北沢では、PMSの症状でメンタル面のつらさを抱える患者さんをサポートしています。「婦人科で診てもらっても心が改善しない」「PMSからのイライラや自己否定がきつい」など、PMSでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。