メンタルヘルス入門
2025.09.10
メンタルクリニックで血液検査を受けるのはなぜ?流れや注意点とともに解説
メンタルクリニックを受診する際、「なぜ血液検査が必要なのか」と疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。
精神科や心療内科で行われる血液検査は、うつ病や不安障害などの診断や治療を進める際に重要な情報として使われています。血液検査によって隠れている身体疾患の有無や、薬剤投与前の健康状態などを確認することが多いですが、さらに詳細を知っていたほうが、納得して血液検査を受けられるでしょう。
この記事では、メンタルクリニックで血液検査を受ける理由や具体的な流れ、費用、注意点、診断書への影響などについて紹介します。メンタルクリニックでの血液検査に疑問や不安のある人は、ぜひ参考にしてください。
メンタルクリニックでの血液検査の必要性
メンタルクリニックで血液検査を受ける際、必要性や意味に疑問を持つ人もいるかもしれません。
ここでは、メンタルクリニックにおける血液検査の目的や検査項目、理由などについて紹介します。
メンタルクリニックにおける血液検査の目的
心療内科や精神科で血液検査を行う主な目的は、精神症状の背景にある身体疾患の有無を確認し、適切な診断と治療につなげることです。
例えば、甲状腺ホルモンの異常や重度の貧血、糖尿病などの内科的な病気は、気分の落ち込みや不安感など精神的な不調の原因になる場合があります。血液検査によって身体的要因を把握することで、精神症状の原因をより高い精度で把握しやすくなります。
また、薬物療法を安全に行うため、肝臓や腎臓などの機能を事前に確認したり、必要に応じて血中薬物濃度の測定を実施したりすることも重要です。
このように、血液検査は診断精度の向上と治療の安全性確保に大きな役割を果たしています。
主な検査項目
メンタルクリニックで行われる血液検査では、患者さん本人も気付いていない可能性のある異常の有無について調べます。
例えば、以下が代表的な検査項目です。
- 血球検査(赤血球・白血球数やヘモグロビン値など)
- 生化学検査(肝機能や腎機能、血糖・脂質など)
- ホルモン検査(甲状腺ホルモンなど)
- 免疫検査(必要に応じて炎症反応や自己抗体など)
このような検査項目から、貧血や感染症の有無、肝臓・腎臓の働き、糖尿病や高脂血症の有無、内分泌系の異常などさまざまな情報が得られます。
血液検査を行う理由や背景とは
精神科で血液検査が重視されるのは、精神症状の背後に身体疾患が隠れていないかを正確に判断するためです。
例えば、うつ病の診断基準には、「ほかの医学的疾患によるものではないこと」という条件があり、治療を開始する前に必ず確認しなければいけません。
実際、心の不調で受診した患者さんの中には身体疾患が発見されるというケースもあります。このため、メンタルクリニックの初診時には血液検査による身体状態のチェックがとても重要です。
また、心の問題が体調に、逆に身体の不調が精神症状に影響を及ぼすケースも多いため、血液検査は適切な治療に欠かせないステップになります。
メンタル関連の診断における血液検査の役割
血液検査は精神疾患そのものを直接診断する検査ではありませんが、診断を補助し、医師が適切な治療方針を提案するための重要な情報を提供します。
例えば、うつ病や不安障害は、血液検査の数値だけで確定できないため、詳細な問診や症状の観察が基本です。
一方、甲状腺機能低下症のように、うつ症状と似た症状を示す身体疾患を血液検査で見分けられます。発見された場合には内科や専門科など、より適切な診療科での治療が必要です。
このような客観的なデータは、診断や治療方針の見直し、必要に応じた他科の受診判断にも活用されます。血液検査は精神科診断をサポートするだけではなく、患者さんの包括的な健康を守る役割を担っています。
血液検査の詳しい内容
精神科の血液検査と聞くと特殊なものを想像するかもしれませんが、基本的には体の状態を調べる一般的な検査です。
ここでは、メンタルクリニックで行われる血液検査の具体的な内容について紹介します。
血液検査で分かる主な項目
血液検査では身体のさまざまな状態や病気の可能性を把握します。以下が代表的な検査項目と、検査によって分かる内容です。
検査項目 | 内容 |
---|---|
血球数 | 貧血や感染症の有無 |
生化学検査 | 肝臓や腎臓の状態 |
血糖・脂質 | 糖尿病や脂質異常症の有無 |
ホルモン検査 | 甲状腺機能の異常 |
ビタミン・ミネラル | 栄養状態の確認 |
免疫・炎症反応 | 感染症や膠原病などの有無 |
このように見てみると、メンタルクリニックといっても、血液検査では一般的な健康診断で行われる血液検査とほぼ変わらないことが分かるのではないでしょうか。
しかし、適切な治療方針や投薬計画を立てる際、医師が必ず確認する重要なデータになるため、メンタルクリニックでは血液検査が行われます。
うつ病・不安障害に関連する基準
うつ病や不安障害は、血液検査だけで診断できる病気ではありません。現時点で血液検査の数値だけで確定診断が可能になる基準は確立されていないため、あくまで補助的な役割にとどまっています。
このような精神的な症状には、糖尿病の血糖値のような明確な診断基準になる数値が存在せず、医師は患者の訴える症状や行動の様子を詳しく聞き取り、診断基準に沿って総合的に判断しています。
一方で、前述した甲状腺機能低下症や重度の貧血などは、うつ病と似た症状を見せることも多いです。そのため、補助的とはいえ重要なデータを明らかにする血液検査は欠かせません。
診断補助としての役割と限界
血液検査には限界があり、数値だけですべての精神疾患を判断することはできません。
検査結果が正常だからといって、うつ病や不安障害が否定されるわけではなく、反対に異常値が出ても心の不調と断定できるとは限りません。診断は問診や臨床症状の総合判断によるため、前述の通り、血液検査はあくまで補助的な役割にとどまります。
最終的には検査データと医師による診察を組み合わせて判断されるため、血液検査の結果が悪かった場合でも、「きっと心の病気が重いに違いない」と心配しすぎないようにしましょう。
血液検査だけでは分からないこともある
メンタル関連の病気は医師の問診や観察が重要です。強い不安や抑うつ感、過去の心理的な体験、対人関係の悩みなど、血液検査では把握できない主観的な症状も多く存在します。
また、血液検査で異常がなかった場合でも、すべての身体的原因を否定できるわけではなく、症状によっては追加検査や経過観察が必要となることもあります。また、診断名が最初からはっきりせず、経過とともに変わる場合も少なくありません。
血液検査結果だけに注目せず、あくまで診療の一部と考えて、疑問や不安があれば医師に相談してください。
血液検査の具体的な流れと受診時のポイント
初めての受診で血液検査をする人にとっては、検査の手順や待ち時間など、気になることも多いでしょう。
ここでは、メンタルクリニックで血液検査を受ける際の流れや注意点について紹介します。
検査の準備や当日の流れ
血液検査は通常、診察後に医師の判断で実施され、場合によっては次回以降になることもあります。初診の場合は問診票の記入と診察を経て、必要に応じて採血や心電図が案内される流れが多いです。
特別な準備は不要ですが、検査内容によっては空腹での来院が望ましいこともあり、その際には事前に指示が出ます。
採血は腕の静脈から数分で行われますが、注射が苦手な場合は事前に伝えておくと配慮を受けやすいでしょう。採血後は激しい運動を避け、内出血や痛みが続く場合はクリニックに相談しましょう。
検査結果は当日中には出ず、多くの場合は次回診察で説明を受ける流れです。
検査結果が出るまでの期間
血液検査の結果が判明するまでには、通常数日から1週間程度かかります。採血された血液は院内や外部の検査センターで分析され、その日のうちに結果が出ることはほとんどありません。
多くのメンタルクリニックでは、初診時に検査を行った後、1〜2週間後に再診を予約し、その際に医師から詳しい説明を受ける形になります。
仮に検査結果の一部に重大な異常や緊急性の高い問題が見つかった場合には、クリニック側から早めに連絡が入る場合もありますが、特に連絡がない場合は次回診察日まで心配しすぎず落ち着いて待つようにしましょう。
検査費用や医療保険の適用範囲
血液検査の費用は、医師が必要と判断した場合は健康保険が適用され、自己負担は原則1~3割です。
初診時の診察料と検査料を合わせると、5,000円前後が一般的で、再診時は1,500~2,500円程度と少し安くなります。血液検査を行わない場合は2,000~3,500円台が目安です。
また、精神科に継続通院する場合は、公的制度である「自立支援医療制度」を利用するのもおすすめです。自己負担が軽減されるため、通院・治療の費用の懸念がある人はぜひ確認してください。
検査後の医師の診断や説明
血液検査の結果は通常、次回の診察時に医師から説明されます。検査がすべて正常で、身体的な異常が原因でないことが確認されれば、精神科的な診断や治療方針が提示される流れです。
一方、異常が見つかった場合は、その内容や精神症状との関係について詳しく説明され、必要に応じて専門医への紹介をはじめ、身体疾患の治療が優先されます。また、検査結果によって薬の種類や投与量の調整が行われることもあります。
診察時には疑問や希望を率直に伝え、治療方針について納得がいくまで相談しましょう。
血液検査を受ける際に知っておきたいこと
血液検査を受けるメリットやデメリット、診断書への影響などが気になる人もいるかもしれません。
ここでは、メンタルクリニックで血液検査を受けるにあたり、知っておきたいポイントについて紹介します。
血液検査を受けるメリットとデメリット
血液検査のメリットは、まず甲状腺疾患や貧血など、心の不調と症状が似ている身体疾患を除外・早期発見できる点です。身体疾患が原因の場合は適切な治療につなげられ、原因の見逃しを防ぎやすくなります。
また、肝臓や腎臓の機能を把握することによって薬の副作用リスクを減らした薬剤選択や投与量の調整が可能になります。さらに、検査結果が正常なら大きな身体の病気がないという安心感が得られ、異常があっても原因が明確になることで納得して治療に臨みやすくなるでしょう。
一方、デメリットは経済的な負担や、採血による痛み・精神的なストレス、結果を待つ間の不安などが考えられます。
メンタル疾患の診断書への影響は?
血液検査の結果が診断書の内容に直接影響することはほとんどありません。精神科や心療内科の診断書に記載される病名は、血液検査の数値で決まるのではなく、患者さんの症状や経過をもとに医師が総合的に判断するためです。
血液検査がすべて正常でも、うつ病や不安障害などの診断名で診断書が発行されることは十分にあり得ます。逆に、検査値に異常があっても、精神症状が軽い場合には必ずしも休職などの診断書が出るとは限りません。
診断書の内容はあくまで臨床的な判断が重視されると覚えておきましょう。
職場への提出書類と休職診断書
メンタル不調で仕事を休む際には、会社提出用の診断書(休職診断書)が必要です。
診断が適切に行われていれば当日でも発行してもらえますが、血液検査の結果を待ってからの場合、検査結果が出るまで日数がかかることになります。診断書を依頼する際は、「業務に支障がある」「○日から休職したい」など具体的に伝えることで、よりスムーズな発行につながります。
必要に応じて再検査や専門医療機関への紹介も
血液検査でわずかな異常値や基準値ぎりぎりの結果が出た場合、主治医から再検査をすすめられることがあります。
例えば、肝機能や腎機能の数値が正常範囲から少し外れていた場合、「生活習慣を整えて1か月後に再度検査しましょう」といった対応がとられることも少なくありません。
特に、薬の服用を始めた後は、薬剤の副作用や体調の変化を確認するため、3〜6か月ごとに定期的な採血による再検査が必要になることもあります。
まとめ
メンタルクリニックで血液検査を行うのは、心の不調の裏に潜む身体の問題を明らかにし、適切な治療を行うためです。
血液検査によって得られた情報だけでは診断することは難しいですが、医師がより正確な診断をするための重要なデータになります。検査結果に応じて治療内容が調整されたり、必要なら専門医を紹介されることもありますが、心身の健康のために必要なことだと理解しておきましょう。
メンタルクリニック下北沢では、血液検査の結果を参考に、より正確な診断と効果的な治療計画を患者さんへ提供しています。血液検査への質問やご不安などがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。