心的外傷及びストレス因関連障害群
最終更新日:2025.05.01
心的外傷及びストレス因関連障害群
♦反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
幼児~小児期早期において
大人の養育者に対する抑制され情動的に引きこもった行動
最小限にしか安楽、支え、保護、アタッチメントを進んで求めようとしない。
苦痛を感じたときに養育者から保護を求めるための一貫した努力を示さない。
養育者との日常的な交流の中で陽性の情動の表出の減少、欠如。
♦脱抑制型対人交流障害
幼児~小児期早期において
ほとんど初対面の人への文化的に不適切で過度の馴れ馴れしさを含む行動様式。
上記2疾患はともに社会的ネグレクト(小児期の不適切な養育)が病因と想定されている。
前者が抑うつ、引きこもりなどの内在化障害、後者が脱抑制となる外在化行動を引き起こす。
♦心的外傷後ストレス障害
A 実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への以下のいずれか一つの暴露。
⑴心的外傷的出来事を直接体験する
⑵他人に起こった出来事を直に目撃する
⑶近親者友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする
⑷心的外傷的出来事の情報に繰り返し極端に暴露される
B 出来事の後に始まる 精神的侵入症状
⑴出来事の反復的、不随意的、侵入的で苦痛な記憶
⑵出来事に関連した反復的で苦痛な夢
⑶フラッシュバックなど、出来事が再度起こっているような解離症状
⑷想起に伴う心理的生理的苦痛
C 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避
苦痛な記憶、思考、感情、またそれを想起させる事象からの回避。
D 認知と気分の陰性変化
⑴解離性健忘
⑵世界に対する否定的信念
⑶自罰・他罰傾向
⑷持続的陰性感情
⑸活動性低下
⑹陽性感情を維持できない
E 覚醒度・反応性の著しい変化
⑴対人対物への激しい怒り
⑵過度の警戒心
⑶自己破壊的行動
⑷過剰な驚愕反応
⑸集中困難
⑹睡眠障害
♦適応障害
はっきり確認できるストレス因に反応してそのストレス因の始まりから3か月以内に情動面・行動面の症状が出現。
⑴ストレス因に不釣り合いな程度や強度を持つ著しい苦痛
⑵社会的職業的他の重要な領域における機能の重大な障害
この疾患は心的外傷に至らない程度の広範なストレスが病因となる機能障害で、高ストレス社会の現代においては全ての人にリスク要因が
あると考えるべき。ちなみにこの疾患名は具体的な障害の内容については触れていないが、
分類下位項目で 抑うつ気分 不安など具体的な症状について特定するように求めている。
PTSDの概念は長い歴史を持ち、19世紀末~20世紀初頭の戦争では兵士の「シェルショック」や「兵士の心臓症候群」が報告され、第二次世界大戦期には「戦闘疲労」「戦争神経症」などと呼ばれた。
1980年のDSM-IIIでPTSDは独立した診断名として確立した。一方日本では明治期に欧米から「外傷性神経症(Traumatische Neurose)」として概念が導入されたが、戦前・戦後を通じて研究は十分に進まず、一般的な注目を集めなかった。
本格的にPTSDが社会的認知されたのは、1995年の阪神・淡路大震災後である。
近年はDSM-5(2013年)でPTSD、急性ストレス障害(ASD)、適応障害などが「トラウマ・ストレス関連障害」に分類され、ICD-11(2018年)では複雑性PTSDも新設されている。
ASDは1994年のDSM-IVで導入され、外傷後3日~1ヶ月以内の症状を対象にしたものである。適応障害もDSM-5/ICD-11で基準が明確化され、近年研究の注目分野となっている。