解離症群
最終更新日:2025.05.01
解離症群
意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻、不連続。
a)主観的体験の連続性喪失を伴った、意識と行動へ意図せずに生じる侵入(同一性の断片化、離人感、現実感消失といった陽性解離症状)
b)通常は容易であるはずの情報の利用や精神機能の制御の不能(健忘などの陰性解離症状)
しばしば心的外傷直後に生じ、健忘、フラッシュバック、麻痺、離人感などの解離症状はPTSDの主要症状である。
♦解離性同一症
二つまたはそれ以上の他とはっきり区別されるパーソナリティ状態によって特徴付けられた同一性の破綻。
他の人から指摘されたり、本人から報告されることもある。
日々の出来事、重要な個人情報、心的外傷的出来事の想起についての空白の繰り返し。
環境要因として、他者からの身体的性的虐待が関連していることが多い。
欧州においてはこの障害を持つ人々の約90%に小児期の虐待およびネグレクトが存在するとした報告もある。
♦解離性健忘
重要な自伝的情報で心的外傷的またはストレスの強い性質をもつものの想起が不可能であり、通常の物忘れでは説明ができない。
通常は限局性健忘(ある特定期間の出来事の想起不能)だが、時に数年に及ぶ。選択的健忘、全般性健忘、系統的健忘、持続性健忘など時にみられる。
発症は通常急激で、要因としては 小児期の好ましくない身体性的虐待、暴力のある人間関係などを背景に起こりやすいとされる。
♦離人感・現実感消失症
離人感;自らの考え、感情、感覚、身体、または行為について、非現実、離脱、または外部の傍観者であると感じる体験
現実感消失;周囲に対して、非現実または離脱の体験
これらが一定程度症状持続し、それ以外の現実検討は正常に保たれている状態。
これらの症状は機能障害よりも生きている実感が持てない状態自体が実際大変苦痛を伴うもので強い情動的痛みをもたらす。
またこの症状はあらゆるといってよい精神疾患において併存することがありうる。
解離症群は、意識・記憶・アイデンティティなど心理的機能の統合が一時的に失われる疾患群。
その概念は19世紀後半にシャルコーやジャネらによって研究され以来、精神医学のみならず社会・文化の文脈でも議論されてきた。現在のDSM-5では、外傷体験に関連する障害群のすぐ後に解離症群が配置され、その関連は
20世紀後半にはPTSD概念の発展とともに、解離症のトラウマ関連性が注目されるようになって以降議論が続いている。
同時に、1980年代以降はDSMでの「多重人格障害(DIDの前身)」の採用や治療・記憶の信憑性を巡る議論が活発化した。