神経認知障害群
最終更新日:2025.05.01
神経認知障害群
♦認知症/軽度認知障害
1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚ー運動、社会的認知)において以前の行為水準から有意な認知の低下がある。
毎日の活動において認知欠損が自立を阻害している。
♢アルツハイマー病
♢前頭側頭葉変性症
♢レビー小体病
♢血管性疾患
♢外傷性脳損傷
♢プリオン病
♢パーキンソン病
♢ハンチントン病
♦せん妄
元の認知水準からの変化を伴った注意や意識の障害。注意の障害は注意の方向付け、集中、維持、転換する能力の低下として現れる。
その人の注意が揺れ動くため質問を繰り返さなければならなかったり、その人は適切に注意を転換するよりも前の質問への回答に保続していたりする。
無関係な刺激に容易に注意をそらされる。意識の障害は環境、時に自己に対する見当識の低下として現れる。
障害は短期間で形成され、1日のうちで変動する傾向がある。夕方夜間に憎悪する。
誤認、錯覚、幻覚なども時にあり。
認知症(dementia)の概念は古く、用語は13世紀から使われており、18世紀には医学的に認識されるようになった。19世紀末から20世紀初頭にかけて神経病理学が発展し、認知症の原因疾患ごとの分類が進んだ。
代表的な例を挙げると、
1892年にアルノルト・ピック(Arnold Pick)が失語と言語機能障害を伴う局所性前頭側頭葉の萎縮を報告し、これが後に前頭側頭型認知症(FTD)の先駆けとされた。
1894年にはオットー・ビンスワンガーとアロイス・アルツハイマーが脳卒中後の認知症(vascular dementia, VaD)と梅毒性認知症を区別した。
1906年にアロイス・アルツハイマーは独特な神経原線維変化と老人斑を認める症例を報告し、アルツハイマー病(AD)と名付けられた。
1912年にはフリッツ・ハインリッヒ・レビーがパーキンソン病の病理学的研究中に脳幹核(迷走神経背側核など)に好酸性封入体(レビー小体)を発見し、後にレビー小体型認知症の病理的基盤となった。
1976年には小坂憲司らがレビー小体が皮質にも広く分布する認知症症例を世界で初めて自験例として報告し、レビー小体型認知症(DLB)の概念が確立した。
これらの疫学・病理学的発見を経て、認知症はアルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型など複数の病態に分類されるようになった。