メンタルクリニック下北沢

神経発達障害群

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最終更新日:2025.05.01

神経発達障害群

 

幼児期・小児期に発症し、中枢神経系の生物学的成熟と密接に関係した機能発達の障害あるいは遅滞。
個人的、社会的、学業、職業における機能障害をもたらす。
主な障害として
知的能力障害、コミュニケーション症群、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、神経発達運動症群、限局性学習症などが挙げられる。

 

♦知的能力障害(知的発達症)

いわゆる全般的知的機能の欠陥があり、それらが発達期に発現している。また
以下3領域における適応機能の欠陥がみられる。
概念的(学問的)領域 『記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的知識など』
社会的領域 『他者の思考、感情、体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技術、友情関係を築く、社会的判断など』
実用的領域 『セルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、学校と仕事の課題の調整など』

 

♦自閉スペクトラム症

複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥がある。以下3項目。

 

⑴ 相互の対人的ー情緒的関係の欠落で、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやり取りのできないこと、興味、情動、感情を共有することの少なさ、
  社会的相互反応を開始したり応じたりすることが難しい。

⑵ 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥。まとまりの悪い言語的、非言語的コミュニケーション、視線を合わせること、身振りの異常、
  身振りの理解、その使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥。

⑶ 人間関係を発展、維持、理解することの欠陥。社会的状況にあった行動に調整することの困難、想像上の遊びを他者と楽しむ、仲間に対する興味の欠如。

 

行動、興味、活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下4項目のうち少なくとも2項目該当。

 

⑴ 常同的または反復的な身体の運動、物の使用、会話。
⑵ 同一性への固執、習慣へのこだわり、言語的非言語的な儀式的行動様式。
⑶ 強度、または対象において異常なほどきわめて限定され執着する興味。
⑷ 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、環境の感覚的側面に対する並外れた興味。

 

♦注意欠如・多動症

⑴⑵の少なくとも一方が6項目以上(17歳以上は5項目以上)該当する

 

⑴不注意症状
a 学業、仕事、他の活動中にしばしば綿密に注意することができない。不注意な間違いをする。
b 課題または遊びの活動中に注意持続が困難。
c 直接話しかけられたときに聞いていないように見える。
d 指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない。
e 課題、活動を順序だてて行うことが困難。
f 精神的努力の持続を要する課題に従事する事を避ける、嫌がる。
g 課題、活動に必要なものをしばしばなくしてしまう。
h 外的な刺激で気が散ってしまう。
i 日々の活動で忘れっぽい。

 

⑵多動性および衝動性
a 手足をソワソワ動かす、とんとんたたく、椅子の上でもじもじする。
b とどまる必要があるのに離席。
c 不適切に走り回る、高いところに上る。
d 静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
e じっとしていない。
f しゃべりすぎる。
g 質問が終わる前に出し抜いて答え始める。
h 自分の順番を待つことが困難。
i 他人を妨害、邪魔をする。

症状は12歳以前からいくつか存在し、家庭、学校など複数の状況でみられる。

 

20世紀前半(1920 年代)、自閉に似た症状を示す児童の報告は散見された。特にレオ・カナー(Leo Kanner)は1943年に「情緒的交流の自閉的障害」を記載し、生涯早期からの社会性の欠如と「同一性保持」(変化への抵抗)を主要特徴とした。一方、同時期にハンス・アスペルガーも言語能力を伴う「自閉的精神病質」(1944 年)を報告し、両者の概念は後に「自閉症スペクトラム」という枠組みで統合される礎となった。

18世紀末から過活動・不注意を伴う児童の記載はあり、クリクトン(1798 年)からスティル(1902年)まで連なる記録がある。しかし現代的なADHD概念は20世紀後半に形成された。

1994年(DSM-IV): DSM-IVでは、ADHDを「不注意優勢型」「多動-衝動優勢型」「混合型」の3つの下位型に分けた。この分類は多くの追試研究で支持され、ADHD診断はDSM-IV 以降大量の研究検証が行われ、DSM-5 で微調整された。また、この時期までにADHDが成人にも持続し得ることが認識され、診断に成人の症状例も考慮されるようになった。