メンタルクリニック下北沢

パラフィリア障害群

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最終更新日:2025.05.29

パラフィリア障害群

 

第一群 異常な行動の嗜好性

♦求愛障害
行動のゆがんだ要素
♢窃視障害
♢露出障害
♢窃触障害

 

♦苦痛性愛傷害
痛みや苦痛を伴う
♢性的マゾヒズム障害
♢性的サディズム障害

 

第二群 異常な性的対象の嗜好性

♢小児性愛傷害
♢フェティシズム障害
♢異性装障害

 

異常な性嗜好に関する記録は古くから存在し、古代の文献にも覗き見(窃視)や獣姦などに相当する行為の記述がみられる。

19世紀末、ドイツの精神科医クラフト・エビングが『Psychopathia Sexualis』で様々な性的倒錯症例を報告し、性的逸脱行動が医学的関心を集め始めた。この著作は日本でも1913年に翻訳紹介され、当時「変態性欲」と呼ばれていた概念の普及に影響を与えた。「性的倒錯(パラフィリア)」という中立的な専門用語が大正時代頃から用いられるようになり、20世紀には各種の性嗜好異常が精神医学的に分類されるようになった。

DSM-5-TRおよびICD-11の最新の分類枠組みにおいては、「合意的かつ無害な性的嗜好」は多様な人間性の一部として尊重され、それが

「本人の苦痛や社会的機能の障害、あるいは非合意の他者への加害」を伴うとき初めてパラフィリア「障害」として扱われる。

この境界線は、最新の精神医学研究や性科学の知見によって裏付けられており、BDSMのような合意的性的実践は一種のライフスタイルないし嗜好として理解されつつある。一方で、児童虐待や性的暴行に直結するようなパラフィリアについては診断上も社会的にも厳格に対処され、必要に応じて治療・管理の対象となりうる。要するに、「性的嗜好の異質さ」そのものよりも、「それによって引き起こされる結果の是非」で病的かどうかを判断するのが現在の標準的な立場である。