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2025.09.10

適応障害の治し方とは?回復までのステップや治療法を解説

適応障害の治し方とは?回復までのステップや治療法を解説

適応障害は、仕事や人間関係、環境の変化などで生じた強いストレスが原因で発症する精神疾患です。気分の落ち込みや不安など様々な症状が現れます。

適応障害は原因になったストレスから離れれば、6か月以内に症状が軽減することが多いとされているため、早めに治療をスタートし、心身を休ませることが欠かせません。そのためには、適応障害になった時の適切な対処法や、自分でも取り入れやすい対策などについて知っておくと役立ちます。

この記事では、適応障害の回復までのステップや治療法、日常生活での工夫、再発防止策などについて紹介します。適応障害の治し方を知りたい人、治るまでの期間が気になる人などは、ぜひ参考にしてください。

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適応障害が回復に向かうまでのステップ

適応障害が回復に向かうまでのステップ

適応障害の治療には3つのステップがあり、休養期・回復期・調整期の3段階で回復を目指します。

ここでは、各時期の過ごし方や治療の内容などについて紹介します。

初期(休養期)

初期の休養期では、まずストレス源から物理的・精神的に距離を置き、心身をしっかり休めることが優先されます。この時期は心身の疲労が蓄積しているため、「何もしない」時間と環境が必要です。必要であれば診断書を取り、休職することも視野に入れてください。

動けるようになったら、軽いストレッチや散歩など体に負担の少ない運動から始めて徐々に回復を図ります。症状が強い場合は医師と相談の上、一時的に薬物療法を併用して不安や不眠を緩和することもあります。

休養中は自分を責めず、できるだけゆったりと過ごし、症状の改善を最優先にしましょう。また、休養期は焦らずじっくり治療に専念し、周囲からの支援を受けながら段階的に回復を図ることが大切です。

中期(回復期)

中期の回復期は、心身の調子が徐々に安定し、活動量を少しずつ増やしていく段階です。とはいえ、まだ無理は禁物のため、医師の指示を聞きながら進めていきましょう。

無理のない範囲で運動を始めるのもおすすめです。例えば、ストレッチや散歩など軽い運動から始め、翌日に疲れが残らない程度に身体を慣らしていきます。自分なりのリラックス法を取り入れてみるのもよいでしょう。

また、負担を感じるようなことがあれば医師に相談し、治療計画の調整を行うことも重要です。調子が良くなると無理をしたくなりますが、焦らず自分のペースで進めてください。

調整期(再発防止期)

調整期の段階では、生活リズムを整えながら心身をより安定させていきます。十分な睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動などで規則正しい生活習慣を身につけ、ストレス耐性を高めていきましょう。

心身の調子が十分に回復してきたところで、自身の課題に取り組み、今後同じような問題に直面した時に乗り越える力をつけていきます。再発防止に向けて、主治医や周囲と連携しながら心構えを固めましょう。

場合によっては、復職に向けた支援プログラム(リワーク)を活用し、専門家のサポートを受けながら職場復帰の準備を進められます。また、深呼吸やヨガ、瞑想などのリラクゼーションを日課に取り入れ、ストレスが溜まった際にはセルフケアで緩和する習慣をつけるのもおすすめです。

医療機関での適応障害の治療方法

医療機関での適応障害の治療方法

医療機関では問診などで詳しく症状や背景を把握し、それに基づいて薬物療法や認知行動療法など、必要な方法を取り入れた治療計画を立てていきます。

ここでは、医療機関での適応障害の治療方法について紹介します。

診察での詳細なヒアリング

診察では、まず問診で詳しい話を聴き、症状の種類や発症時期、職場や家庭などのストレス要因の有無を確認します。

これによって、現在の症状が特定のストレス要因に反応したものか、適応障害の診断基準に合致するかを判断します。特に、症状が発症してからどれくらいか、明らかなストレスの原因が存在するかなどが診断のポイントになります。

また、医師の判断や患者さんの状態にもよりますが、血液検査などで身体疾患を除外し、心身症や別の原因が隠れていないかの確認も必要です。

薬物療法

適応障害の薬物療法では、患者さんの症状に合わせて抗不安薬や抗うつ薬が使われることもあります。

それぞれ不安感や抑うつ症状を和らげる効果があり、医師の方針や患者さんの状態によって選択され、症状によっては追加で睡眠薬や気分安定薬が併用されることもあります。

以下に代表的な抗不安薬や抗うつ薬をまとめました。

薬剤名主な効果
デパス(エチゾラム)抗不安作用。即効性が高く、緊張緩和や筋弛緩効果も持ちます。
ソラナックス(アルプラゾラム)抗不安・抗パニック作用。強い不安やパニック発作に効果があります。
ワイパックス(ロラゼパム)抗不安作用。作用時間が中程度で、比較的穏やかな効果です。
パキシル(パロキセチン)SSRI抗うつ薬。抑うつ・不安症状を改善します。
ジェイゾロフト(セルトラリン)SSRI抗うつ薬。不安や気分の落ち込みを和らげます。
サインバルタ(デュロキセチン)SNRI抗うつ薬。うつ症状だけでなく、倦怠感にも効果が期待できます。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はセロトニンの働きを高め、不安や落ち込みを改善する働きがあります。

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)はセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用し、気力や意欲の低下を改善する薬です。

なお、抗うつ薬は効果を実感するまで通常2〜4週間ほどかかることが多いため、すぐに効果が出ない場合でも自己判断で服薬を中断しないでください。不安があれば医師に相談しましょう。

認知行動療法

認知行動療法(CBT)は適応障害にも効果的な心理療法で、ストレスに適応しやすい方法を学ぶ治療法です。

この療法では、ストレスを受けた時に生じやすい思考や反応のクセに気付き、それをより現実的で柔軟なものへと変えていくことを重視します。

例えば、以下のような内容があります。

  • 自身がストレスを感じた状況を振り返り、整理する
  • 否定的な考えに偏りがちな場面で、別の視点や解釈を意識的に取り入れる
  • 緊張や不安が高まった際に効果のあるリラックス法を実践する

このような取り組みを積み重ねることで、ストレスへの対応力を向上させ、心身の安定につなげていきます。

家族や周囲のサポートも重要

家族や周囲の理解と協力も回復には欠かせません。

例えば、家事の負担を軽減するために分担を見直したり、静かな休息スペースを用意したりするなど具体的な支援体制を整えます。本人の気持ちに寄り添いながら、過度な干渉を避け、適切な言葉がけで精神的負担を軽減すると効果が期待できます。

また、適応障害の方を支える側も心身のケアをすることが大切です。リラックスできる時間をもったり、家族カウンセリングやサポートグループに参加したりなど、適切な方法を取り入れましょう。

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回復を後押しする生活面の工夫

回復を後押しする生活面の工夫

生活習慣を整えることも、適応障害の回復を後押しします。十分な休養やバランスのよい食事、適度な運動を取り入れ、趣味やリラックスの時間を大切にしましょう。

ここでは、適応障害の回復を後押しする工夫について紹介します。

ストレス源から距離を置く

まずはストレスの根本的な原因から距離を置くことが重要です。

職場や家庭の環境を変えたり、一時的な休職や転居で心身への負担を減らします。例えば、職場が原因なら産業医や人事部に相談して業務量を調整したり、部署異動・勤務時間の変更なども検討しましょう。

一方、すぐには解決できない問題もあるかもしれません。そのような問題は、専門家と相談しながら対処法を考え、回復を優先させます。

心身の休息をしっかり取る

過度なストレスで疲れた心身を回復させるためには、まず十分な休息が必要です。疲労が取れるまで焦らず休むことを意識しましょう。

特に睡眠は大切で、毎日決まった時間に就寝し、十分な睡眠時間を確保してください。寝室は暗く静かにして眠りやすい環境を整え、就寝前にはテレビやスマホを控えるなど、睡眠の質を高める工夫も有効です。心がザワザワして眠れない場合は、ぬるめの湯船につかる、深呼吸をするなどしてリラックスしましょう。

どうしても眠れず、睡眠の悩みが大きくなりそうな時には、医師に相談してください。患者さんの状態によっては、症状に適した薬が追加で処方されることがあります。

リラックスできる趣味や時間を大切に

治療中は趣味や気晴らしも回復に役立ちます。没頭できる活動は心の緊張を解く助けになります。

例えば、以下のようなことを取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 好きな音楽を聴く
  • 読書
  • 絵画
  • 手芸
  • 自然散策
  • 軽い運動 など

また、ヨガやストレッチ、軽い運動は身体だけでなく頭をリラックスさせる効果が期待できます。

仕事や治療以外に楽しみや安らぎの時間を意識的に取り入れ、ポジティブな予定を組むことで気分転換を図りましょう。深呼吸や瞑想のような、簡単なリラクゼーション法を日々の習慣にするのも効果的です。

栄養バランスの見直し

栄養バランスのよい食事も心身の健康維持に欠かせません。

食欲がある場合には、以下のような栄養素を意識して取り入れてください。

  • ビタミンB群
  • 鉄分
  • トリプトファンなど

このような栄養素は精神の安定によいとされており、適応障害の治療に役立ちます。

水分も十分に補給しましょう。カフェインやアルコールは不眠や不安を悪化させるため、摂取量を控えめにすることが望ましいです。

適応障害を再発させないために

適応障害を再発させないために

改善した適応障害が再発しないように、ストレス対処法の定着や生活習慣の工夫が重要です。

ここでは、適応障害を再発させないためのコツについて紹介します。

ストレスコントロールを意識する

適応障害の再発防止のためには、自分に合ったストレス対処法を身につけることが大切です。

発症した時と同じようなストレスに直面した際には、習得した対処法(相談・リラクゼーション法など)で早めにケアしましょう。深呼吸や軽いストレッチ、瞑想などのリラクゼーション法を日常的に取り入れることも効果的です。

また、日記をつけて気持ちを書き出したり、悩んだことを周囲に相談する習慣を作ったりすると、次第にストレス耐性が高まります。

職場の環境調整

職場環境の見直しも重要です。業務量の調整や部署異動、勤務時間の変更などを検討し、負担を減らしましょう。負担を感じた時には上司や同僚に相談し、働きやすい環境づくりを進めることが大切です。

ほかにも、信頼できる同僚に手伝ってもらう、休憩をこまめに取るなどして負担を分散します。

また、産業医や人事部に相談して勤務条件を見直してもらうのもおすすめです。

適度な運動

週に3回程度、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を30分ほど行うと、ストレスホルモンの分泌が抑えられ、精神的に安定しやすくなります。

また、身体を動かすとセロトニンの分泌も促されるため、気分が和らぐ効果もあります。無理のない範囲で身体を動かす習慣を続け、睡眠の質向上や体力維持にも役立てましょう。激しい運動が負担になる場合は、家事やストレッチ、ヨガなど軽い運動にするのもおすすめです。

再発の兆候を見逃さない

心身の調子に不安を感じたらすぐに専門家に相談し、早めにケアを行いましょう。不眠、イライラ、抑うつ感など、以前と似た症状が出てきたら注意が必要です。

例えば、気分が落ち込み始めたらカウンセリングを再開したり、休息時間を増やしたりするなど早期対策が有効です。小さな変化も見逃さず、自分を大切にして、心身の調子の変化には敏感になりましょう。

まとめ

適応障害は、休養期・回復期・調整期という3つの段階を経て回復を目指せる病気です。医療機関では丁寧な問診のもと、症状の原因を特定し、必要に応じて薬物療法や認知行動療法で治療します。

生活面では十分な休息、バランスのよい食事、適度な運動、趣味の時間などセルフケアを実践し、心身を整えるとよいですが、無理のない範囲で進めていくことが大切です。再発防止のためには、治療の過程で学んだストレス対処法を継続し、職場や生活環境の改善に役立ててください。

メンタルクリニック下北沢では、適応障害でお悩みの方や、適応障害かどうか判断が難しいなどのお悩みのある方に幅広くご相談いただけます。適応障害は放置しておくとうつ病のような疾患へ進んでしまう恐れもあるため、早めの治療をスタートしましょう。「適応障害かもしれない」「再発したらどうしよう」など、適応障害に関するお悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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